公開日: 2023年3月29日
歯を失った治療法といえば今まではブリッジや入れ歯が主流でしたが、第三の治療法としてインプラントが注目されています。
インプラント治療とは、顎の骨に歯の根の代わりになるチタン製のインプラント体を埋め込み、その上に被せ物を作る治療法です。
インプラントという単語を聞いたことがあるものの、どんな治療法なのか、安全な素材が使われているのか不安な方もいらっしゃると思います。
そこで本記事では、インプラントの種類や基本構造、材質による違いや治療法の種類について解説します。
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インプラントの構造は、メーカーにもよりますが概ね以下の3つに分かれます。
それぞれに大切な役割があるので解説していきます。
インプラント体とは、失った歯の根の代わりになるもので、顎の骨に埋め込みインプラント全体を支える土台の役割です。
インプラントの材質は、人体に埋め込んでもアレルギー反応が出にくいチタン、もしくはチタン合金です。
直径3~5mm、長さ6~18mmと規格はバラバラですが、埋め込む場所によって最適なものを選びます。
インプラント体の形には以下の4種類があります。
スクリュータイプ | ねじのような形。回転しながら顎の骨に埋め込むので、骨と接する面積が大きく、固定しやすい |
シリンダータイプ | 円筒状で埋入しやすいメリットはあるものの、固定しづらい |
バスケットタイプ | スクリュータイプと同じくねじのような形だが、中が空洞のため、強度が弱く破損しやすいので最近では使われていない |
ブレードタイプ | Tの字のような形なので、狭い部分にも使えるメリットはあるものの破損しやすいので最近では使われていない |
4つのタイプがありますが、強度が弱かったり、破損しやすかったりするデメリットがあるので、今はスクリュータイプのインプラント体が使われるのが主流となっています。
アバットメントとは、インプラント体と歯代わりになる上部構造を繋ぐ役割のものです。
インプラント体にとりつけることで、高さを調節する役割も担っており、歯茎の厚さやインプラントの埋入角度などを考慮し、噛み合わせが悪くならないようにします。
通常のアバットメントの他に、インプラントの外科手術時にインプラント周囲の粘膜が治るまでの間に装着する、ヒーリングアバットメントという仮のアバットメントもあります。
上部構造とは、アバットメントに接続する失った歯の役割のものです。
インプラントの最上部にあるもので、外から見える歯の部分のことです。
どの材質のものを選ぶかによって値段がかわってきます。
上部構造の値段の相場については、被せ物の種類にて後述します。
インプラントは、上部構造、アバットメント、インプラント体の3つの構造に分かれると説明しましたが、実はこの3つともが複数の素材からできています。
どんな素材が使用されているかで、耐久性や審美性、安全性に違いが出てきます。
3つの構造の材質による違いをそれぞれ解説していきます。
インプラントの上部構造には、一般的にセラミックが使用されています。
一括りにセラミックと言っても、実は3種類あるのでそれぞれ解説します。
ジルコニアセラミック | スペースシャトルの耐熱タイルにも使用されるほど耐久性が高く、審美性、安全性も高い |
オールセラミック | セラミックだけでつくられたもの。審美性が高く、変色のリスクは少ないが、衝撃に弱く破損しやすい |
ハイブリッドセラミック | プラスチックとセラミックを混ぜたもの。保険適応のプラスチックよりは硬いものの、耐久性は劣る |
全て陶器の素材であるセラミックがベースなので、強い力をかけると破損しやすいのがデメリットですが、透明感があり他の歯の色と合わせやすく審美性に優れています。
噛み合わせが強い場合やくいしばりが強い場合など、まれにセラミックではなく合金製の上部構造になることもありますが、一般的には上記の3つのいずれかが使用されることがほとんどです。
アバットメントに使用される材質は以下の通りです。
複数の材質があるものの、インプラント体と同じメーカーかつ、同じ素材のものしか適合しないように作られています。
インプラント体の材質は、一般的にチタンもしくはチタン合金の2種類です。
チタンは生体親和性(人体に害無くよく馴染むこと)が高いので、比較的アレルギー反応がでにくい素材です。
また、骨との結合も非常に高いので、インプラント治療にぴったりの材質と言えます。
アレルギー反応が出にくい素材といっても、人によってはまれに反応を起こすこともあります。
金属アレルギーを持っている場合は、事前に血液検査でパッチテストを受けた上で、チタンに対してアレルギー反応があるのか調べるようにしましょう。
上部構造は一般的に、歯の被せや被せ物と呼ばれています。
被せ物には主に以下の5種類があります。
それぞれの素材によって、インプラント治療に合ったもの、歯が残っている時に使うものなど治療の用途が異なります。
また、保険治療や自費診療などによって、審美性や耐久性、安全性もかわるので、それぞれ解説していきます。
パラジウム合金は、保険の銀歯に使用するもので、インプラント治療には使用しません。
いわゆる銀歯なので、前歯など見えやすいところには使用できませんし、他の歯と調和せず審美性に欠けます。
保険適応なので安価でコストを抑えられるメリットはあるものの、酸化して銀イオンが歯茎に溶けだし、歯茎が黒ずんだり、経年劣化しやすかったりと耐久性が低いです。
また、金属アレルギーの危険性やプラーク(歯の汚れ)が吸着しやすいというデメリットもあります。
メタルボンドとは、金属のフレームにセラミックを焼き付けた、自費診療で使用される被せ物です。値段の相場は、8~10万円(税込)です。
内側は金属で外から見える部分にのみセラミックを使用しているので、耐久性があり自然な白い歯で見た目も美しいです。
しかし、セラミックがはがれやすかったり、歯茎が痩せた時に金属が見えたりするデメリットもあります。
金合金や白金合金などが使われた、いわゆる金歯です。値段の相場は、8~10万円(税込)です。
金は他の素材と比べてやわらかいので、素材そのものが割れることなく噛み合う自分の歯を傷めないメリットがあります。
また、保険の銀歯に使われるパラジウム合金は使用していくうちに酸化することで、銀イオンが流れ出し歯茎が黒ずむというデメリットを説明しましたが、ゴールドは酸化しないので歯茎が変色する心配はありません。
プラークもつきにくいので、虫歯や歯周病を予防するのにも良い素材です。
ジルコニアはセラミックの一種で、ジルコニアでできたフレームにセラミックを塗り重ねて作られた自費診療の被せ物です。値段の相場は約10~15万円(税込)です。
人工のダイヤモンドと同じ強度を持っているので耐久性と安全性に優れている素材です。
また、歯の自然な色合いや質感を表現できるので、前歯など見えるところの治療に向いています。
ジルコニアは審美性、耐久性の高さから、インプラント治療に向いている素材です。
ニケイ酸リチウムはオールセラミックと呼ばれるセラミックの一種で、高温でセラミックを溶かし成型して作られた自費診療の被せ物です。値段の相場は、10~15万円(税込)です。
透明感があり、周りの歯に合わせた幅広い色調を再現できるので、審美性に優れています。
耐久性も高く、天然の歯に近いしなやかさも持ち合わせているので、噛み合う自分の歯を傷つけにくいというメリットもあります。インプラント治療よりも天然の歯が残っている時の治療に適します。
\どんな治療内容?料金はいくらかかる?こちらを要チェック!/
日本では20種類以上のインプラントが発売されていますが、大きく分けるとワンピースタイプとツーピースタイプの2種類に分かれています。
それぞれにメリット、デメリットがあるので解説していきます。
ワンピースタイプとは、インプラント体とアバットメントが一体化している形状のインプラント体のことです。
インプラント体とアバットメントが一体になっていることで、顎の骨と結合した後は上部構造を被せて治療終了なので、外科手術が一回で済むのがメリット。
しかし、ワンピースタイプに適応できるのは、顎の骨が十分に残っていて骨が硬い場合のみなので、骨や噛み合わせの状態によっては適応されない場合があります。
また、アバットメントに不具合が見つかった場合、一体化となっている事でインプラントごと除去しなければいけないのがデメリットです。
ツーピースタイプとは、インプラント体とアバットメントが分かれているインプラント体のことです。
顎の骨の状態や噛み合わせ、部位に左右されず幅広いケースに対応できるので、主流なインプラント体のタイプです。
インプラント体とアバットメントをねじで接続するので、使用しているうちにゆるむリスクがあります。
また、外科手術が2回必要なので、ワンピースタイプと比べると治療期間が長くなり、身体的負担も増えるのがデメリットです。
インプラントが骨と結合するのを早めたり、感染症を防いだりする目的で、インプラントの表面に加工を施します。表面加工処理の主な種類は以下の通りです。
それぞれの特徴や加工方法について解説します。
機械研磨とは、機械でインプラントの表面を研磨する表面加工処理のことです。
この加工処理は、インプラント部が骨に接触しても問題ないようにするのが目的です。
酸エッチングとは、塩酸やフッ酸、硫酸などの薬剤で、ざらざらとした細かい粗い面を作る表面加工処理のことです。
インプラントの表面に凹凸があることで、骨との結合を高める目的があります。
サンドブラストとは、チタン表面の酸化膜を除去し、顎の骨との結合を強固にさせる表面加工処理のことです。現在の表面過去処理では、サンドブラストが主流です。
ハイドロキシアパタイトとは、骨を形成する成分のことです。
この成分をインプラント体の表面にコーティングすることで、顎の骨の回復を早められます。
インプラントの治療法には、主に以下の4種類があります。
それぞれの治療法について解説していきます。
インプラントの治療法には、外科手術を1回だけ行う1回法と、2回に分けて行う2回法があります。
インプラント手術費の値段の相場は、15~35万円(税込)です。
それぞれ治療の期間や使用するインプラント体などに違いがあるので、解説していきます。
1回法とは、歯茎を切開しインプラント体を埋めこむ、外科手術が1回だけで済む治療法です。このとき、アバットメントを歯茎の上から露出させた状態にし、顎の骨との結合を待ちます。
アバットメントを歯茎から露出させた状態にすることで、アバットメントを取り付けるための外科手術が不要になります。
外科手術が1回だけで済むので治療期間が短いことにくわえ、患者さんの負担を軽減できることもメリットの一つです。
インプラント体のワンピースタイプ、ツーピースタイプともに適応ですが、顎の骨の状態によって適応でないこともあります。
顎の骨が十分にあり硬い場合は1回法に適応しますが、骨の量が十分にない場合や骨が柔らかい場合は2回法になることもあります。
2回法とは、インプラント治療に置いて2回の外科手術が必要な治療法のことです。
1回目の外科手術では、歯茎を切開し、インプラント体を埋め込み、歯茎を縫合します。
インプラント体と骨が結合するまでの期間は通常上顎約6ヵ月、下顎約3ヵ月程度ですが、インプラント体と骨との結合を確認後、2回目の外科手術を行います。
2回目の外科手術では、再度歯茎を切開し、仮のアバットメント(粘膜の治りを待つためのもの)を接続します。粘膜の治癒を2~3週間待って、本物のアバットメントを連結し、2回法の治療は終了です。
2回法は、治療期間が長くなるというデメリットはあるものの、幅広いケースに適応できるのがメリットです。
即時荷重法とは、手術当日にインプラント体の埋入から仮歯まで装着できる治療法のことです。
一般的にインプラント治療は数ヵ月から1年かかることがほとんどで、治療途中はインプラントを埋めたところに負荷をかけてはいけません。
即時荷重法なら手術当日に仮歯が入ることで見た目もいいですし、多少のものであれば噛めるので、生活に支障が出ないのがメリットです。しかし、骨の量や硬さなど適応できるケースに限りがあります。
All-on-4とは、全ての歯を失った状態のインプラント治療のことです。値段の相場は、手術費と上部構造合わせて100~200万円(税込)です。
片顎の前歯部、小臼歯部に最小4本のインプラントを埋め込み、全ての上部構造を装着します。
インプラント体の埋め込みから歯の装着まで1日で済むメリットはあるものの、適用できるケースが少ないこと、高い技術が必要な難しい治療法です。
インプラントは基本的な構造は、歯の根の代わりになるインプラント体、歯の代わりになる上部構造、2つを繋ぐアバットメントの3つです。
顎の骨に埋め込むインプラント体にはチタン製が使用されているので、安全性や耐久性が高く、幅広い方に治療を受けていただけることが分かったのではないでしょうか。
顎の骨の状態や噛み合わせなどによって、インプラントの治療法はかわってきます。当院では、インプラント治療を検討している場合、無料のカウンセリングでお一人お一人のお口の状態に合った治療法や見積もりをご提案させていただきます。お気軽にご相談ください。
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